DI’s Works Vol.7
第三本部長 宮内慎
「グローバルで枠を超えるビジネスプロデューサー集団」

2023年4月にグローバル主管の第三本部長に就任し、ダイバーシティに富んだ組織を率いる宮内慎氏。戦略コンサルティングとインキュベーションの融合を「DIイズム」と定義し、アジアを中心とする対象各国において「グローカライズ」を推進。さまざまな面において枠を超えたビジネスプロデュース活動に取り組んでいる。今回、改めて第三本部の“今”と“これから”について語る。

第三本部長
宮内慎

東京大学経済学部卒業。ニューヨーク大学スターン校経営学修士(MBA)。双日株式会社を経てDIにジョイン。主に大企業に対する新規事業・成長戦略構築、グローバル展開戦略構築・実行支援、官民連携による次世代産業創出・社会解決ファイナンススキーム構築等に従事。2014年~2020年までDIベトナムに駐在、勃興するASEAN全域の内需型セクターを中心に、社会課題解決型の新規ビジネスプロデュース・各種官民連携を基軸とした新産業創出プロジェクト等を推進。2017年よりベトナム拠点長。2020年に日本帰任後、2023年より第三本部長就任。

「“DIイズム”でグローバルインパクトを最大化」

――第三本部の理念と取り組みについて教えてください。

私たちは、DIの基幹支援メニューである産業・ビジネスプロデュースを、戦略コンサルティングとインキュベーションの融合によってグローバルに展開・実践しています。この融合が私の中におけるDIイズムの主要コンポーネントです。

第三本部は、DIイズムを「グローカライズ」して広めていくことを使命としています。グローカライズという言葉には、自分なりのこだわりがあり、ビジネス自体は多国展開する一方、一カ国一カ国、個別の事情に合わせてカスタマイズ、チューンアップした形でDIイズムを組み込んでいく。そんな思いをグローカライズという言葉に込めています。

グローカライズに際しては、日本産業界のグローバルインパクト最大化という至上命題に向け、我々自身も日々「枠を超える」ことを行動指針にしています。例としては、戦略コンサルティング+インキュベーション、官+民、経済的リターン+社会的インパクト、大企業+スタートアップ、Business+Tech+Creative、クライアントサービス+自社事業のように、常に事業領域・価値の枠を超えたビジネスプロデュース活動に取り組んでいます。クリエイティブ面では、電通グループとの共創活動にも力を入れています。

――「枠を超える」ことで、どのような価値を提供されているのでしょうか。

社会課題解決とビジネスインパクトを高い次元で両立していくこと。その観点で、官・民や大企業・スタートアップの垣根を超えた大きな構想を描くこと、そのための仲間づくりに力点を置いています。

近年は、民間企業向けの3E(参入戦略を練って0→1にするEntry、事業拡大を推進して1→10にするExpansion、社会課題解決をビジネスにつなげて10→100にするEvolutionの頭文字)も高評価を受けています。ベトナムに初めての海外拠点を置いた2007年から15年超にわたり、現地企業への投資や、日越官民連携でのビジネスプロデュースに取り組み、組織として泥臭く蓄積してきたローカルインサイト・ネットワークに価値を感じていただいています。

また、インドにおいては、新進気鋭のスタートアップ30社への投資も実施しており、そうしたケイパビリティを基軸としたビジネスプロデュース活動への本気度やリアリティを評価していただいています。

――グローバル×社会課題解決の具体例を教えてください。

JICAの案件をいくつかご紹介します。

JICAと共同で“グローバル×社会課題解決”プラクティスを推進中

1つ目が、途上国におけるスタートアップ育成エコシステムを、官民連携でリアルに構築していくプロジェクトです。日本・途上国の政府と緊密に連携しながら、スタートアップに対する投資を含めた様々なサポートをどのような仕組み・座組みで行うのかについて、各国の広範な関連ステークホルダーと膝詰めで議論をドライブしています。

2つ目が、途上国が抱える各種社会課題と、日本の産業界が有する技術・ソリューションをつなぐ仕組み作りです。主に現地におけるカーボンニュートラル・地球環境分野の社会課題をつぶさに嚙み砕き、各国の当該課題解決に資する日系技術・ソリューションを選定・マッチングし、ビジネス化と社会課題解決を両立させうる伴走支援をしています。

3つ目が、新しい官民連携の形として標榜しているPSE(プライベートセクターエンゲージメント)です。当社が標榜する産業プロデュースというアプローチと表裏一体ですが、文字通り、官がリーダーシップをとりながら、より広範な志の高い民間企業を能動的に巻き込み、あるべき構想を具体化していく仕組みづくり・行動変容・東南アジアでのパイロット事業創出に、日々、取り組んでいます。

4つ目はベトナムの大企業、中小企業の経営者を育成する経営塾の企画・運営です。日本の強みとベトナム固有のビジネス環境を勘案した経営塾講座を設計し、その先の日越の新しいビジネス関係発展を目指しています。

最後の5つ目が、「TSUBASA」というプログラムです。中南米地域26か国向けに、日本が誇る新進気鋭のスタートアップをお連れし、日本以上の規模感・インパクトの社会課題解決を志向するダイナミックなアクセラレーションプログラムを企画・運営しています。

「TSUBASA」についてはこちら
JICA・IDB Lab TSUBASA2023 キックオフイベント 及び オープンイノベーションチャレンジTSUBASA2023開催

上記のようなJICAの共創パートナーとして途上国社会課題解決と日本産業界への裨益を高いレベルで両立する新しい仕組みづくりに加えて、日本の民間企業の東南アジアやインド等における新事業創出や社会課題解決型ビジネス創出に関する戦略コンサルティング、急速に復調しつつあるインバウンド領域における新たなビジネスプロデュースにも注力しています。

――近年の社会課題解決にまつわるビジネスにおいて、トレンドをどのように捉えていますか。

10~20年前と比較して、国際世論・テクノロジーの進展も相まって、いよいよ社会課題をビジネスで解決できる可能性と領域が一挙に拡がりつつあります。普段、議論をさせていただく国内外の政府・企業経営者・スタートアップの中でも、ビジネスによる社会課題解決の対象領域の幅が広くなるとともに、その実現スピードもかつての比較になりません。加えて、ウクライナ情勢を含め、ビジネスにおける外交の地政学的重要性も急速に高まっており、改めて、アジア・大洋州地域を中心に、我が国が官民の総力を挙げて日本のプレゼンス・インパクトを追究していくラストチャンスと認識しています。

これまで、日本の大企業は製造・販売拠点の移管という観点で途上国ビジネスをやってきました。それがいよいよ、アジアを中心とする中間層30億人を視野に入れた社会課題解決とイノベーション創出へと、明確にステージが変化し始めています。そうした中でDIとJICAは、従来型の途上国協力・ODAの次のモデルとして、日本と途上国、官と民が融合して新しい産業を創出していくための新たなグランドデザインの必要性を痛感しています。

分かりやすい例を挙げると、鉄道です。これまでの従来型ODAでは、インフラ整備の観点でアジアの主要都市において数多くの鉄道を整備してきたものの、昨今、諸外国との熾烈な競争環境にさらされています。例えば、我が国の強みを「電鉄主導型の地域一体開発システム」と括り直せば、単なる狭義の鉄道インフラ敷設の枠を超えて、日本の駅ナカ商業施設をジャパンカルチャー発信という観点で組み入れる。または日本の技術・優位性を結集して、駅に電動モビリティのシェアリングステーションも併設したりすれば、市民のラストワンマイルの移動を助けてくれます。つまり、これまでの発想を超えた官民連携のカタチと我が国の競争力の再定義が求められており、そうした部分で我々の支援領域が拡がっていると言えるでしょう。

加えて、途上国であればあるほど、いよいよスタートアップが社会課題解決の最有力アクターとなる時代が到来しています。たとえば、10億円で途上国の離村に小学校を建てることと、教育系の現地の新進気鋭のスタートアップに投資することのインパクト・費用対効果が、やっと天秤にかかるようになってきています。スタートアップと手を携えることで、途上国の社会課題解決やインパクト創出がより巧みに、より大きなスケールでスピーディにできることが世界的に立証され始めています。

「組織運営でも、枠を超える」

――壮大かつ多様なビジネスプロデュースを手掛ける第三本部は、どのような組織構成なのでしょうか。

メンバーは東京オフィスの他、主要拠点の東南アジア拠点(ベトナム・インドネシア)、インドと、4カ国にまたがっています。非常にダイバーシティに富んだ組織で、日本人と外国人比率が4対6、男性と女性の比率が大体4対6という割合です。DIイズムを共有・体現する4拠点のメンバーが国籍・所在国の枠を超え、同じプロジェクト・イニチアチブで一緒に共同・共創する機会も加速度的に増えてきています。

――チームとして、個人として、日々どのような想いで業務にあたっていますか。

新産業は定義によりほぼ例外なく融合領域なので、我々自身も常に既存領域の枠を超えることが大前提として求められます。私自身が総合商社出身であることもあり、当社が標榜するビジネスプロデューサー像は、自分の中では、ニアリーイコール総合商社マンと定義しています。総合商社のように組織全体として多種多様な領域を横断しつつ、グローバルな視座で社会と企業の課題解決に取り組む、このふたつの要素は自分の核であり、部門運営のモットーにもなっています。

メンバー間でDIイズムや目標は共有していますが、皆の国籍・価値観・個性も多種多様で、DIで何を達成したいのか、何をキャリアの軸にしていきたいのかもグラデーションがあります。ですから、部門運営上、各個人の意向も意識した育成やプロジェクトポートフォリオ最適化を常に心がけています。事業の目標達成だけではなく、メンバー個々人の自己実現の両立も考慮することで、組織としてのしなやかさとサステナビリティが担保できると考えています。

楽な仕事ではありませんが、人生を賭して達成したい目標=ライフタイムゴールがあれば、心身は折れないはず。個々人がDIで何を成し得たいのかを最大限尊重し、各員の強みをしっかり引き出していくことが、非常に大切だと考えています。

「第三本部が見据えるこれからの未来」

――今後のビジョンについてお聞かせください。

JICAとの共創領域拡張、日系民間企業のグローバル展開加速、インバウンド領域における新展開。この3つのモメンタムを引き続き維持しつつ、更なる規模拡張に確信を持って邁進していきます。そのためにも、我々の理念・志に共感してもらえるビジネスプロデューサーを日本・ベトナム・インドネシア・インド全拠点で増やしていきます。新たな価値観を持った方々が現メンバーと融合し、異能の掛け算によって組織に深みがもたらされるはずです。ダイバーシティの中でしなやかな強みが宿り、規模拡張の自走サイクルを促すような組織内の循環をつくっていきたいです。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

グローバルにインパクトのある産業・ビジネスを創出されたい日系企業を初めとする産官学のプレイヤーの方々は、ぜひ気軽にお声がけいただきたいです。現在、東南アジアのみならず、インドでのビジネスプロデュースにも注力しています。インドは旧来型の日本産業の製造・販売拠点の移管先では無く、ユニコーン(時価総額10億ドル以上の企業)の輩出数が米中に次ぐ第3位になり、世界のイノベーションの震源地になっています。インドのイノベーションと日本の産業界の強みを掛け合わせ、インドを起点に一挙にグローバル展開を狙っていくような新しい機運も生まれつつあります。興味のある方は、構想段階でも結構ですのでご相談ください。

採用にあたっては、DIが標榜するビジネスプロデュースというアプローチをグローバルに実現していく、このミッションに共鳴してくれる方の参画を求めています。一定の構想・戦略策定能力は当然ベースとして持ちつつも、一個人としてグローバルに伍していけるマインドセットがあるとベターですね。臆せずグローバルなコミュニケーションができる方、戦略コンサルティングの枠を超えた真のビジネスプロデュースに興味のある方、カタマリ感のある事業を自らオーナーシップを持ってドライブしていける方。そういった方々には、ぜひ参画していただきたいと思っています。