DI’s Works Vol.3
第三本部長 細野 恭平
「途上国の社会課題解決のファーストチョイスを目指す」

「途上国の社会課題解決×ビジネスプロデュース」のナンバーワンカンパニーを目指し、グローバルを主管する第三本部をリードする細野氏。途上国の社会課題を解決する際のファーストチョイスとなるべく、チーム一丸となってミッションを推進。アジアを中心とする途上国への支援を通じ、資本主義の新たなあり方を模索していく。

Profile
取締役副社長COO/第三本部長
細野恭平

東京大学文学部卒業。サンクトペテルブルク大学(ロシア)留学、ミシガン大学(米国)公共政策学修士(MPA)。国際協力銀行時代は旧ソ連から独立した直後の途上国に向けたODAの仕事に従事。2005年、大企業とベンチャー双方の文脈に通じたDIにジョイン。おもにグローバルビジネスの推進を担う。2010~2017年はベトナムに駐在し、大企業のアジア展開戦略の支援、ベトナム企業向けの投資などを推進。投資先のベトナム上場企業のターンアラウンドの主導も経験。また、インドのベンチャー企業に対する投資も推進。近年は、ソーシャルインパクトボンド(SIB)をはじめとする新しいインパクトファイナンスのモデルの導入により、日本および途上国の社会課題解決に挑戦。
2021年6月 取締役副社長就任、2022年4月 第三本部長兼務。

 

「途上国の社会課題解決が、大きなビジネスチャンスになる」

――第三本部ではどのような事業を行っているのでしょうか。

大きく二つあります。一つはグローバルな戦略コンサルティング、もう一つはインドを中心とした投資事業です。
グローバルな戦略コンサルティングはおもに途上国を対象にしていて、日本企業の新たな海外展開戦略の構築支援や現地での伴走、また途上国政府と日本政府の協力関係を踏まえた新しい官民連携によるビジネス支援の仕組みづくりなどを行っています。
投資事業は、直近ではインドの成長目覚ましい30社ほどのベンチャー企業に投資してきました。インドでは2022年には、時価総額1,000億円以上であるユニコーン企業が100社に到達し、今後もさらなる成長が見込まれています。投資先はフィンテックやヘルスケアテックといわれる領域が中心で、一つひとつが社会課題解決に直結しているベンチャーです。貧しい人たちへのファイナンスや医療サービスを提供するベンチャーなので、やっていることがそのまま社会課題解決につながっていて、ESG投資などの潮流に沿っています。当本部としても拡大していきたい領域ですね。

――その事業を通じて、顧客にどのような価値を提供できるとお考えでしょうか。

サステイナビリティに関連したビジネスを展開したい日本企業にとって、途上国の社会課題解決という新たな事業領域の可能性を提供することを価値としていきたいです。
私は途上国でのビジネス経験はかなり長いですが、今は途上国の社会課題解決が日本企業にとって初めてビジネスチャンスになる大きなパラダイムシフトを迎えていると感じています。
世界に目を向けると、サステイナビリティを意識していないビジネスは成り立たなくなりつつあります。大企業のトップ層に近ければ近いほど、株主からの強い要請があり、サステイナビリティに貢献できる事業をやらなければならないという意識が高くなっています。
しかし、日本ではビジネスにおいて社会課題解決やサステイナビリティを実現することがとても大変です。高齢化や医療の問題を解決しようと思っても古くからの業界慣習や法制度等の様々な障壁があり、簡単には変えられない。けれど途上国はそうした制約が小さいので、ビジネスをそのまま社会課題解決につなげられます。
地政学的に日本企業にとってのビジネスを考えても、お膝元である日本のマーケットは縮小する一方ですが、グローバルに目を向けると、中国は難しい、ロシアはおそらく今後10年は厳しい、欧米はサステイナビリティに取り組んでいないと容易に参入できないという現状にあります。となると、残っているアジア途上国の市場こそが日本企業にとってフロンティアになります。そして、そのアジア途上国市場は、日本の大企業に求められている社会課題の解決への貢献がそのままビジネスになる市場です。ただし多くの日本企業にとって、いきなりアジアの途上国にビジネスを展開していくのは難しい。そこで日本企業がアジア市場に展開していくための仕組みが必要になってきます。このような仕組みづくりをDIとして、構築・支援していきたいです。

――具体的な事例などあれば教えてください。

直近ではJICA(国際協力機構)のプロジェクトを複数手掛けました。JICAはこれまで途上国のインフラ建設の支援などを中心にやってきたのですが、徐々に途上国の社会課題解決はテクノロジーが先導する時代になってきています。
例えば教育事業の場合、インフラとしての学校をつくることは大事ですが、それよりもオンラインの教育を普及させた方が効果も大きいし、何よりスピードが速い。こうした時代の変化に対応するため、JICAも途上国の社会課題解決に資するテクノロジーを持つ日本企業と連携する可能性を広く求めるようになっています。
昨年度は、中南米・カリブ諸国という地域が抱える社会課題や、地球温暖化のようなテーマとしての社会課題と、具体的なソリューションを持つ日系企業とをマッチングするというプロジェクトをJICAから受託して、コンサルタントとして支援させていただきました。
地域やテーマによって課題は異なりますが、JICAのプロジェクトにおいては、途上国の社会課題を可視化し、解決できる日本企業を公募し、現地にそのテクノロジーを持ち込み、実際に適用できるかどうか、どんなパートナーと組めばいいかを弊社がコンサルタントとして伴走するような支援を行っています。
プロジェクトを一緒に進めているJICAの若手の方たちからは、「今までのやり方を何か変えられそうな期待感があります」という声を聞くことが多く、すごくうれしいですね。

「途上国のネットワークや投資経験、それがDIの大きな強み」

――競合他社と比べ、上記のDIのサービスはどのような点で差別化できるとお考えでしょうか。

先ほどからお話ししている領域は、DIの差別性が圧倒的に活きる領域だと思っています。
もちろん、ベトナム等の東南アジアの途上国をフィールドにして、10年以上戦略コンサルティングをやってきている経験値は差別化の一つです。さらに、DIの場合はインドをはじめとする途上国での投資の経験があることが差別化としては大きいです。途上国での投資はそんなに簡単なものではなく、我々もベトナム等での投資ではさんざん苦労をしてきていますが、その分、途上国でのビジネスの難しさや課題の乗り越え方を実体験として理解しています。そのため、日本企業向けのご提案においても、競合のコンサルティングファームにはない迫力や、経験値からひねり出した解決策をご提案できると思っています。
また、ここ最近はインドを中心とする途上国の社会課題をリードするベンチャー企業への投資経験を通じて、実際に現地の起業家・投資家のネットワークに入り、どんなセクター・会社が成長しているかを肌で感じながら動いていることが、競合他社との差別化になっているように思います。

――担当本部のお仕事をしている中でのやりがいを教えてください。

元々ライフワークとしていた途上国の社会課題解決を、優れた能力を持つ仲間と一緒に推進できるところです。
「途上国の社会課題解決×インパクト投資」やSDGsは、今後もトレンドになる領域です。日本にはまだこの領域の専門家が少ないですが、私は個人的に過去10年、20年とこの領域でやってきて、ベトナムやインドの投資等で様々な修羅場をくぐり、今に至っています。
ようやくサステイナビリティや途上国へのニーズが大きくなり、日本企業がこれまでとは違う目線で途上国に出ていく機会を検討し始めなければならないこのタイミングで、途上国の社会課題解決に関与できるのは、個人的に非常にやりがいを感じます。
また、特にコンサルティングファームの若手にとってみると、途上国の社会課題解決は、専門性が養える絶好のチャンスです。今後数十年にわたって継続できそうな専門性を身につけられるという意味においてはすごくよい機会だと思いますし、メンバーも楽しそうです。

――他の2本部と連携をしていくイメージがあるのでしょうか。

我々は基本的に海外を担当するので、第一本部および第二本部のお客様からグローバルな話があれば、当然一緒に取り組んでいくことになります。途上国向けのDX事業であれば、第二本部と連動していくことになるでしょう。

「人生をかけて挑みたい、新しい資本主義の在り方」

――第三本部として、今後、どのような分野・テーマに取り組んでいきたいなどあれば教えてください。

「途上国の社会課題解決×ビジネスプロデュース」ですね。カーボンニュートラル、アグリ、ヘルスケアなど、問題は山積しています。あとはファイナンシャルインクルージョンといって、ファイナンスを受けられない方々への支援をビジネスとして取り込んでいきたいです。
幸い、僕たちの仲間は海外で事業を手掛けてきた経験者が多くみんな能力が高いので、少数ながらも大きいことができそうな予感があります。
「途上国の社会課題解決×ビジネスプロデュース」という立ち位置の企業は日本にないので、この領域のトップになりたいです。第三本部はやっていることが明確なので、途上国の社会課題解決で力を発揮したい、あるいは夢を見たいという人たちにぜひ集まってほしいですね。
もう一つ、DIの全社的な課題でもあるダイバーシティの充実も取り組みたいテーマです。第三本部のみで考えると、海外拠点を含めてメンバーの男女比はほぼ半々です。特に最大の拠点であるベトナムでは女性のメンバーが大活躍してくれています。また国籍も、日本・ベトナム・タイ・インドネシア・インド等多様性に富んでおり、このまま様々なタイプの人を活用しつつチームを大きくしていきたいですし、DI全体のダイバーシティも推進していきたいと思います。

――担当本部は、顧客にとって今後どのような存在になるべきと考えていますか? 今後のビジョンを教えてください。

途上国の社会課題を解決するときに相談するファーストチョイスです。「インドのフィンテックで何かやりたい」とか「うちの会社の技術は途上国の農業に使えるのではないか」というときに最初に名前が想起され、ご相談に来ていただけるという意味でのファーストチョイスですね。

――個人として、本部の仕事を通して、DIとして、どのような想いでお仕事をされているかお聞かせください。

DIの取締役という立場では、「社会を変える 事業を創る。」ことがミッションとなります。その中で、我々第三本部は「グローバル×投資」に関わる事業を手掛けている。DIをグローバルブランドにしていきたいという思いがあるので、世界中のインパクト投資家とネットワークをつくり、「途上国の社会課題解決×ビジネスプロデュース」のナンバーワンカンパニーをつくりたいと思っています。
個人的に生涯のテーマにしているのは、自己の利益と社会の利益のバランスです。私は母子家庭で育ったのですが、日本は社会保障がしっかりしているので、公立に行っている限り教育費はほぼゼロ、病院も18歳まで無料、国から月々の生活補助ありで、貧しさを感じたことがなかったんです。このように日本は相互扶助の仕組みで成り立っていますが、途上国は決してそうではない。資本主義には新しい考え方が必要だろうと思っているし、世の中でもそういう議論が増えてきているので、この分野に関心を高く持っています。そこに残りの人生を懸けて挑んでいきたいですね。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

グローバルな社会課題解決に挑む会社として、正直、日本で一番面白いことをやっているんじゃないかと勝手に思っています。「やったことに対する後悔は日々小さくなるけれど、やらなかったことに対する後悔は日々大きくなる」。途上国ビジネスやベンチャーというのは、まさにそういう領域だと思います。一緒に戦ってくれる企業、そして仲間を募集しています!