第1話「社会課題から発想せよ」

  • 公開日:2022年06月10日

シナリオ:星井博文
作画:鴨修平
編集:株式会社 トレンド・プロ

コラム

日本の大企業では、大きな事業は生まれにくい

細野部長が「新規事業が生まれない」と言っていますが、これは実際に大企業でよく聞く話です。歴史的な背景で、日本企業にはイノベーションを経験しているマネジメント層が少ないのがその一因かもしれません。1950年代は戦後の有名な創業者達が先頭に立って「欧米に追いつけ、追い越せ」を合言葉に成功体験を積み、皆がイノベーターとなり起業家精神に富んでいました。その後、イノベーターの下に忠実な実行部隊が配置され、ルーティンを確実に回すことに特化した組織になってきました。やがて、ルーティン業務中心の組織で育った方々がマネジメントを担っているというのが、ほんの数年前までの日本の大企業の姿です。

一方で、2020年代に入り、コロナ禍も経て、新規事業が生まれにくい状況は段々と変わってきているという肌感覚がDIにはあります。近年、カーボンニュートラル・DX・ESG・・・と様々な事業環境変化が起こる中で、どの企業も既存事業の延長で存続できるとは考えなくなってきています。イノベーションの重要性が改めて強く認識され、経営幹部候補には海外拠点における新規市場開拓・サービス開発を主導させたり、外部の起業経験を持つ人材を採用・連携したり、といった動きも増えてきており、過渡期とも言える状況です。事業創造への期待はますます高まるのではないかとDIでは考えています。

「社会課題」から発想し、解決策を「妄想」する

夏川さんがメンバーに伝えた「社会課題から考える」というアプローチは、大きな事業を発想する起点としやすい考え方です。日本は社会課題大国とも呼ばれ、エネルギー問題・環境問題・少子高齢化問題など数多くの社会課題を抱えていることは皆様ご存知のところかと思います。DIでは、着目する社会課題が大きければ大きいほど、潜在的な市場規模は大きくなると考えています。

しかしながら、当然、社会課題は誰もが知っているにも関わらず誰も解決できていない課題ですので、ビジネス化するのは困難です。大きな社会課題に対して、今ある技術・ソリューションから積み上げることも重要ですが、そればかり考えていると壁に当たってしまうというのがよくあることかと思います。この時に重要になるのが、最後に夏川さんが言った「妄想」です。社会課題を解決するには、どんな技術が求められ、どんなプレイヤーがどんな役割を担い、それを支える法制度はどうあるべきか、理想像を描くことです。そこから逆算して今からやるべきアクションを考えることが一つの突破口になりえます。ただし、妄想を単なる思いつきで終わらせるという訳ではなく、社会課題の背景を徹底的にリサーチして構造的な課題まで突き止めることで、初めて意味のあるものになります。まずは「妄想」から始め、さらなる情報収集や外部との議論を通して、様々なファクトが論理的に繋がることで「構想」に昇華していきます。