【対談企画】人的資本で成長を促す『ISO 30414』とは?(前篇)

ISO 30414は、国際標準化機構(International Standard Organization、以下ISO)が制定するマネジメントシステム規格の1つで、生産性やダイバーシティなど、人的資本に関する11の領域と58の指標について情報開示のガイドラインを示した初の国際規格である。このたびDIは、ISO 30414の策定に当たるテクニカル・コミッティ(Technical Committee、以下TC260)メンバーの指導を受け、日本国内で初めてISO 30414コンサルティングの資格を取得準拠したコンサルティングサービスを開始した。世界中で注目が集まりつつあるISO 30414について、TC260のアジア唯一の参加メンバーであるザヒッド・ムバリク氏と、当該コンサルティング資格取得者であるDIのビジネスプロデューサー保坂駿介による対談記事をお送りする。

*関連プレスリリース:日本国内初 - 「ISO 30414」コンサルティングサービスを開始

ISO 30414とはどのような規格なのか?

ーーそもそもISO 30414とは、どのような規格なのですか

ザヒッド:

ISO 30414を説明する前に、まず一般的な「規格」について説明します。「規格」とは、物質や製品あるいはプロセスやサービスが、目的に合う形で一貫して使えるよう、要求や性能、ガイドライン等を定めた文書です。ISOの人事に関する規格は、様々な組織やその従業員のために、世界中で異なる人事実務が調和するよう、人事担当者に幅広いガイダンスを提供します。これらの規格は、人的資本を取り扱う上で、最低限必要となる手法や測定指標を特定しています。

ザヒッド・ムバリク HR Metrics CEO/SHRMパキスタン代表/ISO HRスタンダード・テクニカルコミッティー・メンバー/米Center for Global Inclusion ボードメンバー

人的資本の計測・分析の世界における第一人者。11か国の専門家から構成されるISOテクニカル・コミッティ(TC260)にアジアから唯一参加するメンバー。ISOの人的資本に関するワーキンググループの委員長として、「採用の質」及び「採用のインパクト」の2つの国際規格が採択。米国、中国、ロシア、ベトナム、UAE等における人事関連の国際会議のスピーカーとしても活躍。パキスタンにおいてはSHRMのコンピテンシーに基づく資格を導入し、200人以上の専門家を輩出するほか、ダイバーシティとインクルージョンのベンチマークを導入。米Center for Global Inclusionのボードメンバー。Workforce Tomorrow誌編集長。2020年11月よりDIのグローバルパートナーを務める。

 

ーーその中で、ISO 30414とはどのような位置づけになりますか?

ザヒッド:

ISO 30414は、あらゆる種類・大きさの組織が、その従業員に関する人的資本の情報について、定量化し分析するための国際的な指標として設けられた、ボランタリーな(=義務化されていない)ガイドラインです。世界中のエキスパートにより作られ、11の項目の中に58の指標を含みます。

ーーなぜ、人的資本に関する情報開示が求められているのですか?

ザヒッド:

「人材が組織の最大の資産である」とよく言われますが、他の資産に比べ、従業員の構成やその持ち得る影響力に関する情報は殆ど株主に開示されていません。時にコストの6-7割を占める人的資本について正しく把握・分析できないと、投資家は組織が発揮し得る能力を理解することができないのです。

例えば、新規に外部から採用した人材が組織にもたらす価値や、既存の従業員が創出する価値について定量的な開示がなされない結果、良い採用や適材適所の人材配置が出来ていても、正しく認識できないでいます。

 

DIがISO 30414に関わる理由

ーーDIはなぜISO 30414のサービスを始めたのですか?

保坂:

近い将来、個人や組織の“戦闘能力”が可視化される時代が来るのではないかと考えています。不気味に聞こえるかもしれませんが、個人に関しては既に近い状態にあります。例えば、あなたのスマホは、あなたがいつどこで生まれ、どんな教育を受け、誰と結婚し、どれだけの収入を得て、誰と親しいか知っていますよね?

組織に関しては、“人、物、金”のうち、モノとカネといった有形資産については既に可視化されており、投資家は今、人的資本を始めとする無形資産に注目しています。DIは、日本企業がこうした動きに対して、能動的かつ戦略的に取り組めるようご支援したいと考えています。

保坂 駿介 ㈱ドリームインキュベータ 組織・人材プラクティス責任者 

日本輸出入銀行(現国際協力銀行)等を経て、DIに参加。国際協力銀行では、アジアや中東地域において日本企業が関与するインフラプロジェクトに対する融資や、途上国政府向け債権のリストラに携わった後、ワシントン駐在員を経て経営企画業務に従事。DIでは、環境エネルギー、自動車、金融、商社等の海外事業展開支援、海外企業とのアライアンス構築支援、新規事業の立ち上げ等に携わる。現在は、組織・人材プラクティスの責任者として、リーダー、イノベーター、ビジネスプロデューサーの育成、組織改革等に従事。多くの企業で、10年かけて200人のリーダーを育成する “経営塾” を展開。日本初のISO 30414コンサルタントとして、人的資本のマネジメントも支援。慶應義塾大学法学部政治学科卒業・フロリダ州立大学国際関係論修士

 

保坂:

我々は長年、企業のリーダー育成を支援して参りましたが、その過程で、日本企業がどれ程人材を大切にし、投資しているかを見て来ました。ISO 30414を知った時、これは日本企業が上手く活用すべきツールだと思いました。

ただ、規格自体は欧米の労働慣行を前提に作られているため、ある程度の“日本化”が必要だと考えており、その上での導入をDIとしてご支援したいと考えています。

 

ーー企業にとってISO 30414を導入するメリットは何ですか?

ザヒッド:

メリットは立場に応じて様々です。経営者は、ようやく自社の人材という無形資産の価値を測る手段を手に入れることが出来ます。人事の透明化により、組織のレピュテーション強化、従業員モラルの向上、離職率の低下、労災の削減、品質の向上、ROIの改善などが期待され、顧客や投資家の信頼が向上します。

人事部は、ISO 30414の導入により、セクターや業界横断で人事関連のコストが比較可能になる結果、効率的な人材マネジメントが可能となり、不要なコストを削減することが出来ます。


ザヒッド:

従業員の待遇や仕事に対する期待は、関係者により良くに理解されるようになり、組織内で異動した場合でも蓄積されたスキルや能力が発揮できるようになります。また、自身の能力を向上させることにより、境界を越えてより良いポジションを目指せるようになります。

また、この規格が導入されるようになると、労働市場も活性化されます。労働者の能力が適時適切に把握されると、バーチャルかつ柔軟な勤務形態も可能となり、“労働力の取引市場”が形成されて来ると考えます。

 

ー2020年、HR MetricsDIはグローバル・パートナーとなりました。どのように協業するのですか?

保坂:

ザヒッドの指導を受け、我々は日本初のISO 30414コンサルタントになりました。とはいえ、彼の知見を借りるべき点がまだたくさんあります。特に、グローバルな観点から、人事実務のベストプラクティスや規格の解釈についてアドバイスを頂きつつ、日本企業に適切な支援を提供していきたいと考えています。

ザヒッド:

保坂さんには、ISO 30414を策定したエキスパートのコミュニティ*にも参加いただいたので、日本企業はDIを通じて世界中の知見にアクセス可能です。

*【参考】Human Capital Impact グローバル・エキスパート・ネットワーク

 

後篇へつづく

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