スマホ・タブレットが生み出すNext Generation ~東南アジアに見る大変動~

「The power of images」。NBC News掲載のこの写真を見た時、私はその言葉を思い出した。

上下ともにバチカンの写真である。(2005年と2013年)

上下ともにバチカンの写真である。(2005年と2013年)

8年という短い月日の中で、スマホとタブレットが、どれ程まで我々の世界を変えたか、端的に表している。

日本でも、電車の中、街行く人々、友人との会話中等。スマホ・タブレット使用者は非常に多い。
総務省の調査によれば、2013年度に日本ではスマホが携帯利用者の50%を超えた)
私の感覚では6-7割がスマホ利用者のような気もするが、会社支給のガラケー等2台持ちのユーザーが影響しているのかもしれない。
もしかすると、いや、きっと、この投稿もスマホやタブレットを使いお読みの方が相当いらっしゃるのではないか。

今回の投稿含め、これから4-5回に渡り、「スマホとタブレットが世界をどのようにDisruptしてきたか、そしてDisruptしていくか」に関し私見をシェアさせて頂きたいと思う。
スマホとタブレットが当たり前になりつつある今だからこそ、世界がどのように変わっているのかにフォーカスしてみたい。

 

私の経験に即して考えると、スマホの普及は、下記の三点で生活をDisruptしている。

スマホの普及

この他、デジカメや携帯音楽プレイヤー等、スマホがDisruptしたものは多種多様だが、総じて私は自分の生活が「より便利に」なったと感じている。
もはやスマホ無しの生活は考えられない。

また、同時に、スマホ以前のデジタルとは「アナログの延長」に過ぎなかったが、スマホによって「新しい世界」が生まれている。

【コミュニケーション】
携帯電話普及以降、日本ではeメール/海外ではテキスト通信。決まった相手と通話以外での連絡が可能になった。
非常に便利になり、携帯における進化は限界だろうと、私は甘く考えていた。

翻って、現在。
FacebookやTwitterといった他者へのシェアツールがインフラとなっている。
LINEのように、特定の相手とのコミュニケーションも複数相手が前提になった。
携帯時代の絵文字が進化し、もっと大きく・かわいくなったスタンプが流行している。

【メディア】
2000年代の昔のネット環境はあくまで新聞購読の延長だった。新聞社が読ませたい記事を投稿し、我々はそれを読む。或いは検索する。
対して、スマホは、我々のメディアへの接し方からDisruptしたのではないだろうか。

ニュースを見たい時、Facebookのタイムラインにアクセスする。友人がいいね!やシェアをしている記事がある。彼・彼女が興味を持った内容なら読んでみよう、と思う。
NewsPicksで著名人がコメントしている記事にアクセスする。あの人がこんな事を言う内容ならきっと面白そうだ、と感じる。
YouTubeで視聴回数が急増している動画がある。見てみないといけない、という強迫観念に近い感じを受ける。

【EC】
いつからこんなにECを使うようになったのだろうか。
記憶が正しければ、一昔前は、ECで購入可能な商品は限定されておりECサイトも充実していなかったと記憶している。

いまはAmazonヤフオク!等、スマホを使い数秒内で検索・購買している(私はついつい買い過ぎてしまっている)。出品者もプロストアから個人まで、商品も新品から返品・余剰品まで。何でも揃っている。

私自身は、まだブランド等の嗜好品は店舗で実商品を見てから購入しているが、5年後はそんな時代を懐かしく思い出すのかもしれない。

コミュニケーション、メディア、EC等の変革。
どれもスマホが可能にした新しい世界だ。

 

さて、今回のテーマである、東南アジアである。

先日、私は東南アジアを旅行する機会があった。その際にも「新しい世界」の到来を強く感じた。
「新興国」という私自身のステレオタイプがDisruptされた瞬間でもあった。

東南アジアは仕事でもプライベートでも、日本人にとって馴染みがある場所だろう。東南アジアに行った事がある方も多いはずだ。

照りつける太陽、けたたましい都市、多様な宗教と文化、エネルギッシュな人々、そしてネオン輝く眠らない街。
私自身、東南アジア独特の魅力に取りつかれている一人である。

ASEAN加盟国を見ると、シンガポールやブルネイといった先進国から、ミャンマーやカンボジアといった新興国まで合計10か国。6億人以上の人口を誇る一大マーケットを形成している。
我々DIもシンガポールとベトナムにオフィスを構えており、アジアの成長の一躍を担いたいと奮闘している。(ベトナムに関してはDIベトナム社長 細野恭平の連載をご一読いただきたい)

 

多くの日本人にとって、「東南アジア=新興国」というイメージが根強いかもしれない。
ASEAN加盟国一人当たりGDPは千ドルを下回っており、日本の10分の1以下である。(1)

しかしながら、スマホ・タブレットの世界ではだいぶ異なる状況となっている。

【スマホ普及率 2013年度】(2)

緑部分が全携帯電話に占めるスマホ利用者の割合

本グラフ。緑部分が全携帯電話に占めるスマホ利用者の割合である。

前述したように日本のスマホ利用者は50%を超えたばかりだが、シンガポールとマレーシアはなんと75%超え。
他の先進国(米英仏独で60~70%)に比べても、東南アジアの一部国は遜色ない状況。

どうやら経済規模や一人当たりGDPとスマホ利用率に大きな相関関係はないようである。

スマホ普及率が高いシンガポール・マレーシアでは、我々日本人の想像を超えたサービスが生まれ、インフラの変化が起きている。

例えば、「スター」

我々日本人の多くはテレビのアイドルをスターと見なしている。ジャニーズやAKB48は、テレビ番組(歌番組、バラエティ、ドラマ)とうまく共棲し、相互補完してきた。

テレビが一般化する以前は、「銀幕のスター」、つまり映画のスターがスターだった。
テレビの普及とともに、スターが誕生して活躍するメディアが、映画からテレビへと変わった。

これと同じ変遷。革命と言っても良い大きな変革が今まさに東南アジアで起きている。

東南アジアでは、テレビに変わりYouTubeが支配的になってきた。YouTubeのスターをYouTuberと呼称するが、東南アジアでこのYouTuberが圧倒的人気を生んでいるのである。
多くの視聴者はティーンエージャーであり、テレビよりYouTubeをメインの動画メディアとして捉えている。

なお、世界で最も人気あるYouTuberのPew Die Pieはチャンネル登録者 3千万人。
つまり彼がYouTubeに投稿すると、少なくとも3千万人に訴求することができる。その3千万人の一部がいいね!/シェアをすることにより、拡散の規模と速度も段違いだ。投稿された動画は数千万回といった視聴回数に容易に届く。

「出待ちをする若者」 シンガポール イベント会場、外の風景「出待ちをする若者」 シンガポール イベント会場、外の風景

(「出待ちをする若者」 シンガポール イベント会場、外の風景: 筆者撮影)

スター出待ち。 テレビのスターではなく、待つのはYouTuberである。
東南アジアのYouTuberとともに世界各国のYouTuberが集まったイベントが、今年5月にシンガポールで開催された。

わかりやすく言えば、東南アジアのティーンエージャーにとって世界中のYouTuberが集まるイベントとは、日本人にとってAKBとジャニーズ、ビヨンセとジョニーデップ等が勢揃いした夢の競演である。

スターは、テレビではなくYouTubeで生まれている。東南アジアで現在進行形の社会変動だ。

「YouTuber登場の瞬間」シンガポール イベント会場、中の風景

(「YouTuber登場の瞬間」シンガポール イベント会場、中の風景: 筆者撮影)

東南アジアではまだまだスマホ普及率が低い国がたくさんある。そして、そういった国に限って、人口も多い。
つまり、スマホ台数がもっと、爆発的に伸びるのだ。

今後5年間、アジアでは20億台ものスマホが増えるとの予測もある。

2019年には30億台のスマホがアジアに普及し、世界の全スマホの過半数を握る。

【スマホ普及率予測】(3)

スマホ普及率予測

スマホ・タブレットが先進国の生活を大きく変えた。
それ以上の速度と規模で、東南アジアの社会は変わっていくだろう。

LCCが東南アジアにおけるリアルムーブメントを激変したように、スマホ・タブレットは東南アジアのデジタルムーブメントを一新していくはずだ。
まだ変革は始まったばかりである。

最後に一つ付け加えたい。
東南アジアのティーンエージャーや若者は、英語を不自由なく使う。
FacebookYouTubeへの投稿は英語が非常に多い。
つまり、東南アジアはアメリカ等の英語コンテンツを享受するだけでなく、自作の英語コンテンツでそのまま世界で戦えるのだ。

日本語コンテンツが言語という参入障壁に守られながら、一方で、世界で戦えない状況とは対照的である。

スマホ・タブレットがコンテンツ産業にどのような変動を生んでいるのか、どう変わって行くのか、何がDisruptされているのか。
過去、現在、未来を見通しながら、次回はこの「コンテンツ」に着目したい。


出所

(1) ASEAN GDP and GDP per Capita
(2) Nielsen report: the smartphone adoption gap in Asia Pacific
(3) The West Is Over — Asia Will Dominate The Smartphone Industry In The Next 5 Years


大野 秀晃

ビジネスプロデューサー 大野 秀晃

慶應義塾大学法学部政治学科卒業。ゴールドマン・サックス証券を経て、DIに参加。ゴールドマン・サックスでは、香港・東京オフィスで各3年間、人事業務全般に従事。主に汎アジア証券部門の人事戦略構築と執行を担当。DIでは、国内外ベンチャーの投資判断、事業投資先の中長期戦略策定及び実行支援、エンタメ・コンテンツ等の分野におけるDI自身の次世代事業創出案件等、幅広い業務に従事。

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