(特別号)「Bokuの野望は新たなグローバル決済スキームとなること」

〜Boku社CEO独占インタビュー〜

Category: Interview
2015.09.01

左端から:林俊助(ドリームインキュベータ)、依田寛史氏(Boku.incカントリー・マネージャー)、Kurt Davis(カート・デイビス、Boku, Inc.アジア・マネージング・ディレクター)、Jon Prideaux(ジョン・プリドー、Boku, Inc. CEO)、山川 隆義(ドリームインキュベータ代表取締役社長)

 

モバイル決済プラットフォームの世界最大手Boku, incが、今、日本市場に注目しています。自らもFinTechに注目しているドリームインキュベータが、日本市場参入への戦略と展望についてBokuのエグゼクティブにお話を伺った。

 

– Bokuについてお話しいただけますか

Jon : この度はお招き頂きましてありがとうございます。また、御社がこの15年間に達成された実績に対し、お祝いを申し上げます。今後、御社とビジネスの機会が必ずあるでしょう。今日はお目にかかれて本当に嬉しいです。

 

Bokuについて端的に語るとすれば、野心に溢れた企業、とだけ申し上げておきましょう。私たちには、VisaやMasterCard、American Expressなどと肩を並べ、新たなグローバル決済スキームになるという野望があるのです。当然のことながら、このような野望を実現させるには差別化が必要です。他のプラットフォームは資金源として何らかのかたちで「銀行」を使っていますが、私たちは電話会社と接続し、電話番号を利用します。

 

– どのような強みがあるのでしょうか?

Jon : このプラットフォームの強みは、銀行口座を持つ人よりも携帯電話の保有者数のほうがずっと多いということにあります。電話番号を利用できれば、決済はさらにシンプルで便利になります。ZipZapのように、カード決済は未だに紙ベースのシステムデザインになっています。ハッキングやセキュリティなど現在のカード決済の問題はすべて、そもそもシステムの仕組みが原因です。カード決済では、とりあえずカード番号さえあれば支払いができ、他には何の照合も必要ありません。Bokuの場合、支払いには電話番号が使われますが、電話がなければ使用できません。つまり、もともとセキュリティが組み込まれているというわけです。

 

私たちが構築したのは規模型の利益率の高い事業で、現在、Bokuのネットワークは70カ国、300キャリアと接続しており、世界中で40億人の消費者にご利用いただけます。これは世界人口の半分以上にあたり、VisaとMasterCardを併せたよりも多くなっています。Bokuの展開範囲はきわめて広いのです。私たちの目下の課題は、ネットワークを改善して利益率の低い商品にも利用できるようにすることです。つまり、ブラウザベースのゲームだけではない、他のデジタル商品への拡大を目指しています。

 

– 誰を主なターゲットとしていますか?

Jon : 私たちは、言うなれば「ほどほどの」世界制覇を達成することができると思います。マセラティのような高級車や家の購入などは眼中にありません。Bokuがターゲットとしているのは、決済額がせいぜい50ドルまでの、簡便で素早い手続きを顧客が求めるような取引です。

 

– コストはどのぐらいかかりますか?

Jon: 地域によって大きな開きがあります。最も高額なケース、例えばブラジルのような国では50%という非常に高い手数料になる場合があります。一方、例えば日本では、優良コンテンツなら手数料は4.5%程度でしょう。クレジットカードと比べると高額ですが、特にデジタルコンテンツで新規顧客を獲得するには安価な方法だと言えます。そこに価値があるのです。

 

– どのように顧客を説得するのですか?

Jon: 現状がクレジットカード決済だけの場合、取引量は100だったとします。Bokuを取り入れれば、120にアップするでしょう。その増加分の20が新たなユーザーです。

 

Kurt: マーチャントが新たに獲得した顧客、それはクレジットカード利用の顧客を置き換えてしまったわけではありません。カード決済が減ることはないのです。携帯キャリア課金も導入すれば、自ずと新たな決済ユーザーが増えることになります。これはまさにマーケティングツールなのです。コストをかけた分だけ新たな顧客、つまり若年層の獲得に繋がります。そうした若い顧客は、携帯電話をかけながら、ランニングしながら、地下鉄の車内で、あるいはコンサートに向かう途中に、といった具合に、いつでも気軽に買物をする人たちです。それこそが、私たちが提供するサービスの真の価値なのです。

 

– つまり、決済額とコストのトレードオフ、それが御社の成功の秘密というわけですね。

Kurt: その通りです。顧客獲得に費用をかける代わりに、決済手数料2%を余分に支払うわけです。

 

Jon: どの企業も売り上げを増やしたいし、顧客も獲得したい。この二つは企業にとってとても重要なことです。そこを考えれば、分かります。単純に、携帯電話を持っている人のほうが多いし利用も簡単です。そして売り上げも増えます。そこから成長という好循環が生まれるのです。

 

BokuはVisaやMasterCardよりも多くの潜在的消費者にアクセスできて、利用するのも簡単です。正直なところ、カードよりも費用はかかります。しかしBokuの利用者は、売り上げが伸びすには、より多くの顧客と繋がることがが重要だと考えています。そのためなら、高い手数料も喜んで払ってくれるのです。私たちは、極めて高いグロスマージンを達成しており、ほとんど際限なくお金をかけられるようなマーチャントとのビジネスから始まっていると言えます。

 

– Bokuに参加する以前は、何をなさっていたのかお話しいただけますか?

Jon: 私はベンチャー向きの人間ではありませんが、決済ビジネスには向いているようです。どんなビジネスでもやれるというわけではありません。唯一、得意とするのがこの決済ビジネスなのです。私は1980年代後半にVisaヨーロッパに入社しました。15年ほど勤務した後、Visaヨーロッパの商品・マーケティング担当の管理職を任されていた時に会社を辞めました。2000年代の始め頃のことです。最初のカード関連のビジネスは、残念ながら上手くはいきませんでした(それでもよい経験になりましたが)。その後、様々なEコマース店舗に決済機能を提供するサービス・プロバイダーを運営し、かなり成功しました。それから、あるEコマースのソフトウェア事業を買い取って運営していたのですが、その間、私の興味はずっと決済ビジネスに従事していました。そして3年ほど前にBokuにカムバックしたというわけです。実はその前からBokuにはアドバイザーとして関わっていたので、当初から私はこの会社のことをよく知っていたのです。

 

そのようなわけで、私は決済ビジネスを立ち上げて成功させるのがとても難しい仕事であるとわかっています。Visaでは決済商品を何度発売しても上手くいかないでしょう。Bokuの良いところは、お話ししたように、それが上手くいっていることです。それには基本的な公式があります。私たちはデジタルコンテンツやリアル商品の小売業者に、こう話しているのです—「Bokuの決済商品を導入すれば、売り上げが伸び、今まで一度も買ってくれたことのない新規の顧客を獲得できるでしょう」。

 

– 日本市場についてはどのようにお考えでしょうか?

Jon: 私たちにとって日本は大変魅力的な市場です。1年後には日本がBokuの単一で最大の市場になるチャンスがあると確信しています。私は、実際に日本の多くのプレイヤーの皆様と会うために来日しました。

 

日本には適正価格のキャリアがあります。また、どんな種類の商品やサービスについても携帯電話からの決済を可能にする政府や法規制環境も存在しています。

 

現在、BokuはソニーPlayStationのグローバルなプロセッサ(決済代行事業者)となっています。私たちは多くの国々で営業しておりますが、非日系企業のBokuがこの日本でソニーのプロセッサであることは大きな誇りです。私たちは他のマーチャントとも繋がりを持っており、その一つにFacebookがあります。日本ではFacebookとの事業も展開します。

 

– 日本市場には何か違う点がありますか?

Jon: まず、日本では携帯電話向けインターネットサービスが非常に普及しており、通信速度も速く、より簡便です。次に、日本のモバイル決済の実績はNTT DoCoMoによって導入されて以来、15年に及んでいます。この極めて成熟した状況は機会と困難とをもたらしています。日本以外ではデスクトップでインターネットに接続するほうが主流です。日本だけがモバイル主体というわけではありませんが、モバイル・ウェブとデスクトップ・ウェブが混在する米国や英国などの西欧市場とは対照的に、日本は大規模かつ高度に、極めて特徴的な進化を遂げたモバイル優位の市場です。また、モバイル決済がi-modeの時代から、すでに長期にわたり存在しているという強みがあります。これについては一長一短です。良い点は、日本ではモバイル決済にすっかり馴染んでいることです。しかし悪い点は、市場のほとんどがすでに既存業者によって占有されており、新規参入者にとっては不利なことです。私たちは優れた決済手順を見つけなければなりません。

 

Kurt: 日本のキャリアのインフラと技術はとても進んでいます。長い間キャリア課金が行われてきたので、すでにキャリア各社の体制は整っています。キャリア会社は決済についても信頼しており、拡大を望んでいるのです。彼らにとっては目新しい事業ではなく、投資と成長の対象になっています。そこが大きな違いなのです。顧客がキャリア決済に馴染んでいること、それは大きな強みです。

 

– 日本のFinTech市場についてはどう思われますか?

Jon: 日本市場にはイノベーションの余地が多く残されていると思います。しかし、FinTechが普及するかどうかは全く分かりません。私はペイメント業界のことは知っていますが、FinTech全般についてはよく分からないのです。例えば経理については何の専門知識も持ち合わせていません。ペイメントの視点から見た場合、まず言えることは、日本には現金で支払う習慣がしっかり根付いているということです。現金はとても不便であることに人々が気づいていないからです。

 

構造的に、日本の市場では銀行の革新を押しとどめようとする多くの力が働いています。ATMの利用料やクレジットカードから高収入を得ている銀行には、日本の消費者を現金のストレスや不便さから解放するイノベーションを促す実質的な動機がありません。


他の国々では、ペイメント業界のイノベーションはノンバンクや新規参入者によって進められます。ヨーロッパやオーストラリアでは、銀行はペイメント市場への政府介入によってアクセスを許可せざるを得ないことがありました。米国ではそこまで政府が関わらなかった代わりに、裁判所の介入がありました。手数料が高額すぎるとして、マーチャントがカード会社を訴えたのです。司法または政府による介入がしきりに行われました。リーマンショック以後、その状況が加速した結果、政府内には銀行の味方がほとんどいなくなってしまいました。そうした状況が変化への下地となったのです。

 

– それが、政府の動きが重要だという理由であり、特に日本では政府との良好な関係を活用することができるというわけですね。

Jon: そうです。日本では変化につながるアクションを政府が起こすことができるかもしれません。銀行が市場のソリューションをもたらすのは困難です。多分、スタートアップは切り抜けることができるでしょう。しかし、ペイメントにはある程度の事業規模が必要なので、とても難しいのです。スタートアップとしてペイメント市場で規模を持つことは極めて困難です。Bokuの場合は、キャリアがすでに持っている規模を借りて自分のものにしているので、問題ありません。私たちは新たなプログラムとプロセスを立ち上げようとしています。既存のシステムを打ち壊すには大きな力が必要です。私は、日本では政府がその役目を果たす可能性が高いのではないかと考えています。ですから、政府を介入させる理由を見つけなければなりません。

 

– なるほど。では最後に、ドリームインキュベータについて、どのようにお考えですか?

Jon: ドリームインキュベータが投資されている企業の多くが取り扱っているのは、オンデマンドの動画や、画像や音楽のデジタルコンテンツなど、Bokuのシステムをご利用いただくのにまさに相応しい商品ばかりです。私たちは日本の全通信キャリアと接続しており、サービスのご提供が可能です。今や一つの接続で世界と繋がることができるのです。ぜひとも御社とお仕事させていただきたいと思っております。

 

– どうもありがとうございました。

 


 

 

ビジネスプロデューサー 林 俊助

東京大学経済学部金融学科卒業を経て、DIに参加。

DIでは、金融/通信/環境エネルギー/商社/医療/消費財などの多岐にわたる分野に対する、成長戦略及び中期経営計画策定、海外展開戦略構築、新規事業開発などに従事。近年は、ベンチャーキャピタル事業にも注力しており、国内外の金融/デジタルメディア/環境エネルギーなどの分野における投資判断、戦略策定、実行支援も経験。

中国上海市出身。

 

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