ダイキンの”欧州躍進”のタネを蒔いた男

ダイキン工業 執行役員 空調営業本部長 坪内俊貴(上)


東洋経済オンライン連載 2014.4.9

Category: Interview
2014.04.09

ダイキンの”欧州躍進”のタネを蒔いた男

三宅:みなさん個人プレーは頑張るけれど……という状態だったわけですね。

坪内:ヨーロッパの方は、個人プレーはすごく優秀です。向こうのセールスエンジニアはとても高い技術力を持っています。尊敬もされている。彼らはひとつの物件につき、3億とか5億の注文を取ってきます。私にはそういう能力がないので、販売店を開発し、販売網を作って、その人たちと一緒にこつこつと1台1台エアコンを売るチームプレーをしてきました。

 現在は、物件を追いかけつつ、販売網も強化するという、一段とレベルアップした営業になっていると思います。中国もそうだし、アメリカもそういうふうになっているのではないでしょうか。

 


 

韓国企業との戦い

 

三宅:それはある意味、ダイキンの勝ちパターンとして、グローバルにも定着してきているのでしょうね。ところで2002年から2003年は、確か韓国のプレーヤーが一気に台頭してきて、大変なことになったと記憶しています。

坪内:LGやサムソンなど韓国勢が出てきて、彼らが安価なエアコンをどっと中東欧や南欧市場に投入してきました。当社はブランド力を武器に、高価格戦略をとっていましたので、あっという間に韓国勢が市場を席巻した時期がありました。

三宅:そのとき坪内さんはどのような手を打ったのですか?

坪内:彼らは売り上げへの直結を重視する短期思考でした。販売店の研修やアフターサービスへの投資は優先順位が低かったようです。だから少々品質が悪くても、とにかく価格勝負で売る。そしてアフターサービスをしなくてすむように、100台 売ったら110台納品する。要するに無料で10台つけて、「何かあったら新品に交換してください」というような売り方をしていました。サービス網を作るより、そのほうがコストメリットがあったのです。

 それに対して、当社は据え付け工事やアフターサービスの研修に時間とおカネをかけ、品質・信頼性において圧倒的にライバルに勝るダイキンブランドを築いていきました。

 ヨーロッパならではの事情も有利に働いたと思います。ヨーロッパでは、基本的には、日本のようにエアコンの室外機を見えるところに設置することはダメなのです。ですから室外機は地下室や内庭などに設置します。部屋の中でも、配管は天井裏や壁の中を通し、見せないようにする。建物がまたれんが造りでしょう。非常に手間暇とおカネがかかるのですよ。

 ですから、ルームエアコンでも、据え付け工事は10万円とか、下手をすれば20万円ぐらいかかることもあります。つまり、ある程度、製品もきちんと高く売り、工事もきちんとする必要がありました。

 南欧では中韓メーカーがエアコンのおまけにテレビをつけたり、工事費をタダにしたりして売っています。しかし北欧や中欧では、製品そのものと据え付け工事をしっかりと認めてもらえる環境があったので、その戦略をとっていけば大丈夫だろうなと思いました。

 それからヨーロッパでは、冷夏と猛暑とではエアコンの需要が日本以上に極端に変動します。本当に弱りました。2003年の大猛暑のときは一気に需要が膨れ上がりましたが、しばらくするとまた下がる。こういう状況では供給が大変です。当時はタイで製造したものをヨーロッパに運んでいたのですが、生産を依頼してから欧州に届くまで、2〜3カ月ぐらいかかりました。

 ヨーロッパの夏は早くて短いのです。6月といったらもう真夏です。6月の需要を3月や4月に予測しないといけないのです。しかし、ヨーロッパの3月はまだまだ冬。夏がどうなるかなんてわかりません。ですから、冷夏になるとエアコンの余剰在庫を抱えたり、工場に急激な減産をお願いしたりで大変でした。

 2003年の猛暑をきっかけに、地域最寄化生産を行うため、ヨーロッパにルームエアコンの工場が建設されました。本当に助かりました。需要が上がれば増産してもらえるし、下がれば減産してもらえる。それまでは2カ月前、3カ月前に需要を読まなければならなかったのが、1カ月前や3週間前でよくなる。リードタイムが短くなるのがいちばんありがたかったですね。

 

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