出版不況と戦う、角川の未来型メディア戦略

KADOKAWA取締役相談役 佐藤辰男(上)


東洋経済オンライン連載 2014.3.26

Category: Interview
2014.03.26

 

三宅:御社の歴史を見ていると、新しいものを持ち込むため、角川歴彦さんや佐藤さんが帰ってきたようにも思えますが、もともと新しいものがお好きだったんですか?

佐藤:そうですね。1992年にメディアワークスという会社ができますけれども、当時の出版業界は絶好調で、92年から97年までにいろいろな雑誌が出ました。そこから右肩下がりになっていくわけですが、われわれは92年に1回どん底を経験して、出版だけでは食っていけなくなりました。キャラクターも、生まれたばかりの電撃文庫も弱くて作品数は少ないし、自分たちの作品をアニメや商品にしてくれるところもありません。そんな状況の中、全部自分たちで、それぞれの事業に触ったぐらいのことをしたのです。そのときの経験が今の基盤のひとつになっているかもしれません。

 


 

 

玩具メーカーから学べること

三宅

三宅:普通は好調な時期が5年、10年と続くと、苦しいときのことを忘れてしまいますけれど、原体験として、新たな取り組みをしていこうというマインドに、みなさんがなっていたということですね。

佐藤:2008年にロンドンにIRに行ったときは、出版にとらわれないIPを多角的に展開していくことの有効性をあらためて知らされた気がしました。IP企業体という言い方をしたのはワンカンパニーになったときですが、その考え方は昔からKADOKAWAの歴史の中にも、会長の考えの中にも一貫してあったと思います。当時は時期尚早だったことが、上場を果たし、M&Aや新規事業を行いながら、今の時代になって、ようやく実現できるようになったということです。M&Aも出会い頭にするわけではなくて、あるべき姿、ありたい姿を考えてするわけですから。

三宅:本来、M&Aはそうすべきものですが、一般的には出会い頭のM&Aをしているケースも多いようです。

佐藤:少なくとも僕の中には教科書はありますね。たとえば玩具メーカーの中には、ずっと玩具メーカーでいるところもありますが、キャラクターに注目し、映像のレンタルから映像事業に入ってアニメ制作会社を買収し、ゲームが足りないからと大手ゲーム会社と強い連携を作っているところもある。この流れはどこまでが必然かはわかりませんが、長期的な視点で、玩具メーカーから日本のエンタテインメント企業になっていくプロセスそのものだったと思うのです。

三宅:なるほど、そうですね。

佐藤:出版も従来、変革が難しい業界ではありますが、出版社にとっても教科書としたい取り組みだと思います。

三宅:そうした取り組みを通じて優良企業になった玩具メーカーの動きはみんな見ていたし、ユーザーをどんどん作家に変えていったその出版社の、今で言うUGC(User Generated Contents)を生み出す機能は、われわれから見ても面白いと思います。ただ、みんなそうなりたいとは思っても、実際にはなれていませんよね。

佐藤:それらの会社の社員は、先輩が作ってきた仕組みの中で、また新しい挑戦をしているわけで、歴史があるからできるというところもあると思います。厚みが必要なのかもしれません。

 

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